お金の話-01[なぜリボ払いは支払いが終わらないのか]-[その仕組みを解説します]


はじめに

 最近、知人から「息子がリボ払いをしているみたいだけど、このまま支払いを続けても大丈夫だろうか?」と相談を受けたことがあります。
 その知人はリボ払いは何となく「怖い、返せない」など悪いイメージは持ってはいましたが、具体的にどうな仕組みになっているのかに関しては、あまり知らないという印象を受けました。

 このリボ払いの話を会社でもしてみたら、「そうなんだ」「知らなかった」という人が多かったため、意外と返済の仕組みを知らない人がいるんだなと思い、今回の記事にまとめてみました。
 ちなみに、私も20年近く投資をしてきておりますので、お金を扱う側の目線も含めた「リボ払いの仕組み」を解説したいと思います。

・ここで説明している「リボ払い」とは「ショッピングリボ払い」です。
・残高や残金など、一部表記ゆれがある場所がありますが、大目に見てください。
・この記事は仕組みの解説になります。
・クレジット会社を悪く書いている箇所もありますが、それは「勢い」です。いかなる個人、団体、企業を誹謗中傷する物ではありません。

なぜ支払いが終わらない?[分割払いとリボ払いの”仕組み”の違いについて]

 返済方法の比較対象として分割払いがよく取り上げられますが、ぶっちゃけて言えば返済の仕組みが違います。

 少し乱暴な言い回しになりますが、分割払いは契約通りに支払っていけば返済が終わる仕組みに対して、リボ払いは返済が終わらない仕組みです。返済が終わらない仕組みになっているのだから、終わるわけがありません。
 リミッターを付けたトラックが、80km/h以上速度が出せないのと同じです。そういう仕組みになっているからです。

 


なぜ支払いが終わらない?[リボ払いは何を返している?]

 では、具体的に分割払いと、リボ払いの支払いの中身を見ていきます。
 例えば銀行で100万円の自動車ローンを組んだとしましょう。このローン返済に対して、毎月支払っているお金の中身は「元本と利子」です。
 では、100万円の自動車をクレジットカードで購入し、後日リボ払いに切り替えた場合、クレジットカード会社に何を払っているかご存じでしょうか?…… 答えは「定められた金額と手数料」です。

 利子というのはお金を借りた側が、その借りている対価として相手に払うものです。今回のケースで言えば信用枠の範囲で買い物をして、それをリボ払いにしただけですので、お金は貸していません。なので名前が違います。
 言葉が違えば意味も違います。リボ払いで支払いで減っているのは「元本」ではありません。減っているのは「残金」です。
 一般的になローンや分割払いでは、返済するたびに「元本」が減っていくルールですが、リボ払いは「元本」ではないので、そのルールは適用されず、貸金業法の総量規制を超えて、リボ払いでは「残金」を増やすことが出来ます。だから返済が終わらないのです。

  


なぜ支払いが終わらない?[分割払いとリボ払いの減り方比較]

 それでは実際に、金利[1.50%]の100万円自動車ローン(60回払い)と実質金利[15.00%]の定額2万円支払いコース(残高スライド方式)の減り方を比較して、金額の減り方を見てみましょう。

 あれ?分割払いと同じで、リボ払いでも減っていくじゃんと思った方いませんか?
 リボ払いで減っていくのは上記で説明した通りクレジットカードの残金です。当然、残金が減っていけば最終的には0円になります。

 説明している事と違くね?と思っている皆さん。皆さんはリボ払いをどこで知り、どこでリボ払いの設定をしますか?もちろんクレジットカード会社ですよね。クレジットカードを利用していなければリボ払いと出会う事はありません。つまりリボ払いをするという事は、何かしらクレジットカードを使っている状態からスタートするという事です。

 そう、毎月クレジットカードを利用するという事は、残金がなかなか減らないという事です。残金が減らなければ支払いは終わりません。リボ払いの返済の仕組みは残金が減らない仕組みなんです。もう一度言います残金が減らないんです!!

  


 では実際に、上記例(返済額2万円+手数料)に加えて「新規カード利用2万円」で計算してみましょう。

 お分かり頂けたであろうか、5か月間で162,500円も払っているのに残高が1円も減りません。
 ちなみに新規カード利用の2万円を1.9万に変更すると、めでたく1000回(83年と4ヵ月)後に完済できます。もはや笑えないジョークです。

※豆知識ですが、リボ払いの支払方法の一つに「元金定率方式」というのがあります。これは残金に対してある一定の割合を支払う方法なのですが、この方法で支払いを続けると残高が数円になった段階で、支払金額と手数料が0円となり、100年経っても1000年経っても理屈上、返済が終わりません。

  


なぜ支払いが終わらない?[クレジット会社がリボ払いを勧めてくる理由]

 では、どうしてこの様な鬼畜な仕組みを、あの手この手を使ってクレジット会社は我々カード利用者に勧めてくるのでしょうか?
 これを知るには、残金が0円の状態からリボ払いをスタートさせ、クレジット会社がどの位の期間で、どの程度の手数料を得ているかを見れば分かります。
 新規カード利用額を2.5万円にして、実質金利[15.00%]の定額1万円支払いコースのリボ払いを開始してみましょう。

 ごらんの通り、わずか2年間のリボ払いで、残金は36万円に到達し4年後には72万円となります。そして、その間クレジット会社が得ている手数料の合計は4年間で22万円となります。
 支払方法を変えるだけでこれだけの手数料収入を得ることが出来るのですから、クレジット会社としては何としてでもカード利用者に、リボ払いへの切り替えをして欲しいのです。

 しかも、これで終わりではありません。これまで説明した通りリボ払いは返済が終わらない仕組みです。これからもカード利用者はクレジット会社に手数料を納めていく事になりますので、このまま残金が増えもしない減りもしない状況を2年続けるだけで、クレジット会社はさらに21万もの手数料収入を得ることが出来ます。

 この様に、クレジット会社としては支払い方法を変えるだけで高額な手数料を得ることが出来ますので、様々な広告やキャンペーンを前面に押し出して、我々カード利用者に対して勧誘を試みてきます。
 よく「リボ払いに切り替えたら1万円キャッシュバック」などという誘い文句がありますが、この支払方法で行けば、0円からスタートしても10ヶ月で手数料収入は1万円を越える計算となりますので、1万円のキャッシュバックなど、痛くもかゆくもありません。なんなら3万円のキャッシュバックでも喜んでするでしょう。

  


なぜ支払いが終わらない?[リボ払いの終わらせ方]

 これまで説明しているように、リボ払いの土俵上で返済をしている限り返済は終わりません。ですのでその土俵を降りて、本来あるべき姿の返済方法で返済を行うべきです。

具体的には……

・一括返済

・残金を確定(元本化)して分割などの返済を行う

 一番いいのは一括返済でしょう。
 預金など金融資産があるのであれば、秒で払うべきです。一旦キャッシュが減ることになりますが、早期に関係を断ちましょう。
 ローンの借り換えなども検討の余地はありますが、ローンに切り替える場合は分割で支払いが完了する物を選んでください。カードローンはダメです。困ったらカードローンという癖がつくと言われており、賢い選択肢とは言えません。

 次に残金を確定する方法ですが、これは所謂、債務整理というやつです。
 弁護士さんにお願いしてクレジットカードを使用不能な状態にし、残金を確定させる仕組みです。残金が確定すればそれは元本となり、手数料も名前を変えて利子となります。


 デメリットとして金融情報に登録されますが、これはメリットともいえます。
 それはなぜかと言うと、リボ払いに変更する人は、一般的に貯金が少ない方が多いと言われていますが、そもそも金融資産が無いのに上限30万、50万の信用得ることが間違いだと思っています。
 ですので、一度クレジットカードなど捨てて、数年間はお金を貯める勉強期間と思えば、金融情報の傷なんて大した問題ではありません。

  


最後に

 リボ払いは「多重債務の母」であり「借金の父」と個人的には思っており、この支払システム自体には感嘆すら覚えますが、立派な企業が堂々とキャンペーンをしてまで、カード利用者に勧める物ではないと考えています。
 そんなに素晴らしい支払方法であれば、福利厚生の一環としてカード会社の役員、社員全員の支払いをリボ払いしてあげればいいのにと思ってしまいますが、なぜかそんな話は聞こえてきません。

 企業は本質的に、株主の事を考え儲かる事しかしません。「ポイント還元最大10%キャンペーン」とかも最終的には儲かる仕組みへと繋がっています。(一見10%は凄いですが、大体は支払い上限が決まっていて、企業から出ていくお金は事前に分かっています)
 ポイント還元とかポイントキャッシュバックとかに翻弄される必要はありません。もっと世の中は単純に考えるべきで、買い物などは「必要なときに必要なものを必要な分だけ」買っていれば問題は無いのです。

 日本の学校教育では、あまりお金の話はしません。その結果、社会に出てお金に関するトラブルに巻き込まれる人は、決して少なくありません。
 今回の記事を通して少しでも多くの人に、支払の仕組みを知ってもらえれば幸いです。

 また、お金に関する内容などはブログで書いていきたいと思います。もしこの記事が参考になったという方がいらっしゃいましたら、ツイッターなどでフォローお願いします。